アメリカ50州(+1)比較:日本の法曹資格がなくても受験可能な司法試験②

アメリカの司法試験
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先日洗い出した、日本の法曹資格をもたずLLM留学をした人が受験できる可能性がある程度残る州(7州/地区)につき、今回はさらに受験の実現可能性や手続きについてそれぞれ深掘りしてみたいと思います。

調査にあたっての前提条件

今回は、前回の記事で ①米国へのLLM留学だけ(JD課程は履修しない)でも受験可能、②自国の法曹資格が必須条件とされていない という最低条件が確認できた7州/地区のうち、ニューヨーク州を除く カリフォルニア州コネチカット州オハイオ州テネシー州ウィスコンシン州ワシントンD.C.についてそれぞれ以下の項目を確認していきます。

UBE(米国統一司法試験)・MPRE の合格最低点
州独自試験の有無
LLMでの授業履修要件
法学教育要件を満たすことの確認方法(法学部卒・法曹無資格の場合)
受験資格確認にかかる費用
受験料

UBEについては以下にまとめています。

また、今回除外したニューヨーク州の受験資格要件については以下をご参照ください。

各州における試験概要・受験要件

1.カリフォルニア州

① UBEは不採用(MBEのみ採用)。MPREの合格最低点:86点
② 州独自の論文試験、起案試験 (Performance Test) 各5問
③ LLMでの最低取得単位20単位、うち指定科目12単位
指定の評価機関で自国での教育に関する評価レポートを取得し、試験委員会に提出
 (参照:Foregin Education
⑤ 評価機関での評価にかかる金額+登録料119米ドル
⑥ 受験料667米ドル

自国の弁護士資格があれば無条件で受験できることから、日本人の弁護士で受験される方も多いカリフォルニア州。

法学教育の評価にあたってはfirst degree in lawが要求されており、法学部卒の無資格者が受験を認められる割合はニューヨーク州と実質変わらない状況という声も聞きます。

LLMでの履修要件はそれほど厳しくないものの、論文試験の割合が高く、全米一難しい司法試験とも言われています。

2.コネチカット州

① UBEの合格最低点:266点、MPREの合格最低点:80点
② 州独自試験なし
③ LLMでの最低取得単位24単位、うち指定科目12単位
指定の評価機関で自国での教育に関する評価レポート(course by course evaluation)を取得し、成績表等と併せ試験委員会に提出
 (参照:Determination on Foreign Education
⑤ 評価機関での評価にかかる金額+申請料500米ドル
⑥ 受験料800米ドル

法曹資格自体が必須とされているわけではないものの、自国における”completion of the educational requirements for admission to the practice of law”が求められており、文言上、ニューヨーク州と同様にロースクール卒(あるいは予備試験合格)でないと受験資格が認められない可能性が高そうです。

3.オハイオ州

① UBEの合格最低点:270点、MPREの合格最低点:85点
② 州独自のオンライン試験あり
③ LLMでの最低取得単位30単位、うち指定科目20単位
指定の評価機関で自国での教育に関する評価レポート(course by course evaluation)を取得し、成績表等と併せ試験委員会に提出
 (参照:Guidelines for Requesting Evaluation of Foreign Education
⑤ 評価機関での評価にかかる金額+評価料150米ドル
⑥ 受験料452米ドル

要求されているLLMでの最低取得単位が圧倒的に多いのが特徴的です。

通常のセメスター制で、1年間で30単位を取るのは現実的にかなり厳しいように思われます。

また、first degree in lawについての要件はないものの、法学教育の期間が最低3年以上であることの証明が必要である旨定めがあり(Section 2(C)(2))、東大法学部で学士取得の場合、要件を満たすと認めてもらえない可能性があります。

4.テネシー州

① UBEの合格最低点:270点、MPREの合格最低点:82点
② 州独自のオンライン講座受講要件あり
③ LLMでの取得単位に関する要件なし
NACESに登録されている評価機関で自国での教育に関する評価レポート(course by course evaluation)を取得し、試験委員会に提出
 (参照:Graduates of Foreign Law Schools
⑤ 評価機関での評価にかかる金額のみ
⑥ 受験料625米ドル

比較した7州(/地域)の中で唯一、LLMでの取得単位に関する制限が全くありません。

first degree in lawについての言及はありませんが、日本の法学士がどこまで認められるかは未知です。

5.ウィスコンシン州

① UBE不採用(ただしMBE,MEE,MPTともに採用)。MPREは受験不要
② 州独自の論文試験あり
③ LLMでの最低取得単位24単位、うち指定科目12単位
④ 受験申請にあたって直接試験委員会に申請
⑤ 850米ドル(SCR40.14(3)(i)
⑥ 受験料450米ドル

LLMでの単位取得要件は平均的な設定。

独自の論文試験があるようなのですが、日本人受験生の少ない州だけに、どういったものが出題されるか情報収集が難しそうです。

受験資格の確認にあたって850米ドルかかるので、まずは他の州の受験資格を確認してから、あるいは第三者評価機関での評価結果を確認してから可能性を探る形でもよいかもしれません。

6.ワシントンD.C.

① UBEの合格最低点:266点、MPREの合格最低点:75点
② 州独自試験なし
③ LLMでの最低取得単位26単位、うち指定科目26単位
④ 受験申請にあたって declaration を提出
⑤ 教育要件評価にかかる費用なし
⑥ 受験料205米ドル

自国での教育要件については他州に比べかなり緩やかに思われます。

一方で、UBE科目の中から最低26単位は履修しなければならないという、かなり厳しい履修要件が定められています。

まとめ

各州の規則等の文言を確認する限り、もっとも受験資格が認められる可能性が高いのはワシントンD.C.でしょうか。

一方で、ワシントンD.C.はLLMでの履修要件が厳しいというデメリットもあります。

これらを踏まえて、まずは以下の2つの手続を同時に進め、様子を見ながらどちらかに絞る、あるいはウィスコンシン州の受験資格確認に移る、といった流れにするのがよいのではと考えております。

ワシントンD.C.での受験申請(受験資格確認)を進める
②自国での教育について、カリフォルニア州、コネチカット州、オハイオ州、テネシー州で共通して認められている評価機関における評価を開始する

進捗があり次第、随時情報を更新していきます。

 

※個人のできる範囲で簡易的な調査を行ったものであり、また規則は常に更新されていくことが想定されますので、受験を検討される際にはぜひご自身で原典をご確認ください。

コメント

  1. たけちゃん より:

    P子さん、はじめまして。
    私もP子さんと同じく学部卒で来年LLM留学、その後Bar受験を検討している者です。
    P子さんがNY Bar受験できないこと、近い立場の者として大変残念でなりません。
    私は予備試験経由で司法試験合格しているのですが、やはりロー卒or法曹資格保有者しかNY Bar受験できないんですかね、、、
    良いお知らせがあることを祈っております。

    • P子 より:

      たけちゃんさん

      コメントありがとうございます。お返事が遅くなり申し訳ありません。
      NY Barでは、「弁護士資格を有するために必要な教育を受けていること」が要求されているので(このあたり詳細に書いておらず恐縮です)、私見ですが、予備試験経由で司法試験に合格されているのであれば、受験資格が認められる可能性はかなり高くなるのではないかと思います。
      たけちゃんさんも受験資格を認められるといいですね、こちらこそ応援しております!

  2. たけちゃん より:

    P子さん
    ありがとうございます。
    NY Barは受験資格はあるかもしれないですが、Probonoの要件を満たせず弁護士登録ができないかもしれないので、Cal Barを検討しています。
    P子さん、ローの生活が始まってお忙しいと思いますが、落ち着いたタイミングでブログ更新楽しみにしてます!

    • rm より:

      Probono要件もなかなか面倒ですよね…。Cal Bar受験、応援しております!
      ありがとうございます、なかなか慣れずに時間を取れずにおりますが、近いうちに更新したいと思います。

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