前回書いた通り、NY barの受験可能性が限りなく望み薄になってしまったのですが、こうなると俄然好奇心が出てきて、他の州の受験可能性についても気になってきたので、少し調べてみることにしました。
調査にあたっての前提条件
今回、以下の2つのポイントに絞って、まずはアメリカの50州+ワシントンDCの受験資格要件をすべて比較してみました。
①米国へのLLM留学だけ(JD課程は履修しない)でも受験可能か
②自国の法曹資格が必須条件とされていないか
ただ、どの州も基本的にはJD(Juris Doctor)課程の修了が前提となっていますので、上記①②の条件をクリアしている場合でも、外国で法学位を取得している場合は、当該法学教育がアメリカの法学教育と比べて同等であるといえるかを各州で判断してもらう必要があります。
また、①②の条件を満たしていても、アメリカでLLMを履修するにあたって、独自の履修要件(単位数、取得科目)を設定している場合もあります。
これらの基準については州ごとにかなり多様性があるので、また別途詳細をまとめるとして、今回は最低限の足切り条件①②をクリアできる州について、まずまとめてみることにします。
50州(+1)の受験資格要件
上記記載のとおり、①米国LLM留学で受験可能か、②日本の法曹資格がなくても受験可能か、という2軸で調査した結果がこちら。
まとめると、日本の法曹資格をもたずLLM留学をした人が受験できる可能性がある程度残る州は、カリフォルニア州、コネチカット州、(ニューヨーク州、)オハイオ州、テネシー州、ウィスコンシン州、ワシントンD.C.の7州/地区。
ただし、別途記載のとおりニューヨーク州は「法曹資格試験を受けるのに必要な教育を受けている」ことが前提とされており、とくに近年の卒業者は、日本の法学士取得は不十分であるとの厳格な当てはめがなされるケースが多いようです。
州名 | LLM留学生 も受験可能 | 法曹資格不要 | |
Alabama | ○ | × Rule IV. B(d) | |
Alaska | ×* | - | |
Arizona | × | - | |
Arkansas | × | - | |
★ | California | ○ | ○ Rule 4.30 |
Colorado | ×* | × Rule 203.4(3) | |
★ | Connecticut | ○ | ○ Art.II-3 |
Delaware | × | - | |
Florida | ○ | × 4-13.4.a | |
Georgia | ○ | × Part B Section4(c) | |
Hawaii | ×* | × 1.3(b) | |
Idaho | × | - | |
Illinois | ○ | × Rule 715 | |
Indiana | × | - | |
Iowa | × | - | |
Kansas | × | - | |
Kentucky | ○ | × Rule 2.014(4)(c) | |
Louisiana | ○ | × Section 6 Foreign Educated Lawyers Requirement | |
Maine | ○ | × Rule 10.(b)(4) | |
Maryland | ○ | × Rule 19-201(b) | |
Massachusetts | ○ | × VI.3.2(ii) | |
Michigan | × | - | |
Minnesota | × | - | |
Mississippi | × | - | |
Missouri | ○ | × 8.07(e) | |
Montana | × | - | |
Nebraska | × | - | |
Nevada | ○ | × Rule 51.5.1.(c)(2) Addendum 2, 5.8 | |
New Hampshire | ×* | - | |
New Jersey | × | - | |
New Mexico | ○ | × Rule 15-103 A.(2) | |
△ | New York | ○ | △ Rule 520.6(b)(1) |
North Carolina | × | - | |
North Dakota | × | - | |
★ | Ohio | ○ | ○ Section 2(C) |
Oklahoma | × | - | |
Oregon | ×* | - | |
Pennsylvania | ○ | × Rule 205(a) | |
Rhode Island | ○ | × Article II Rule 1 | |
South Carolina | × | - | |
South Dakota | × | - | |
★ | Tennessee | ○ | ○ Article VII Sec.7.01(a) |
Texas | ○ | × Rule 13 Sec.5 | |
Utah | ×* | - | |
Vermont | ○ | × Rule 8(b) | |
Virginia | × | - | |
Washington | ○ | ×* Rule 3(b)(4) | |
West Virginia | ×* | × Rule 3.0(b)(4) | |
★ | Wisconsin | ○ | ○ SCR 40.055(2) |
Wyoming | × | - | |
★ | District of Columbia (Washington D.C.) | ○ | ○ Rule 46(c)(4) |
(※米印はCommon Lawの国で法学教育を受けていれば可)
※2021年7月21日追記:ワシントン州は明文上法曹資格必須ではないものの、法曹資格を取得するのに必要な教育を満たしていることが必要とされており、日本の場合はロースクールを卒業(または予備試験合格)していないと実質的に厳しいようです。(参考:アビタスとワシントン州の議論)
参考にした情報
比較にあたっては、ほとんどの州の司法試験で導入されている統一試験(UBE)を運営・実施するNCBE(National Conference of Bar Examiners)公表の 各州の受験要件一覧 を参照したほか、各州の司法試験委員会や裁判所が定めている規則・命令を参照しています。
※個人のできる範囲で簡易的な調査を行ったものであり、これらの規則は常に更新されていくことが想定されますので、受験を検討される際にはぜひご自身で原典をご確認ください。
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